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金澤義春物語第9部・ポイ捨て禁止条例が決まるまで(エピソード8からの続き)

行政の反対を押し切る



 ここで私は“歴史的”ともいえる 『川崎市飲料容器等の散乱防止に関する条例』 の成立について書かねばならない。
 たいへん長たらしくてお固いお役所的用語の条例だが、これがいわゆる
『ガム・タバコ・空き缶・ポイ捨て禁止条例』 である。この言い方の方が具体的でわかりやすい。ま、それはともかく、この条例成立までには、またいくつかのトラブルがあった。



私が組織した 『ガム清掃ホームレス部隊』 の活動は約三ヶ月ほどつづいたが、取っても取ってもまたすぐに捨てる。これはもうなんらかの強硬手段を取らなければ駄目だ、市に任せておいても駄目だという思いが私を決心させた。



 市は、 「人々のモラルの問題だ」 などと言っていたが、では、そのモラルに訴える方法を何か打ち出しているか。はっきり言って、いまや日本人にはモラルなどない、自分の住んでいる街のことなどどうでもよい、ただ自分だけよければというヤカラがふえている。
 ホームレスの諸君が、ガムをはがしている姿を見ても、誰一人として感謝の言葉をかけたものはいない。さっさと通り過ぎていくのだ。これが情ない現実である。



実は、私は“ホームレス部隊”をつくる前に、学校の先生にお願いしたことがある。
「先生、どうでしょうか、生徒さんの登校前に、このガムはがしをお願いできないでしょうか」
 先生は、相談してみましょうと言われたが結果は駄目だった。原因はPTAから反対が出たのである。
「うちの子は夜遅くまで受験勉強をしている。それを朝早く起こしてガムはがしだなんてとんでもありません!」
というわけだ。
 つまり、一事が万事、もうモラルに期待などと言ってはおれない。



 わたしは、そこで罰則が必要ではないかと考えたのだ。外国の事情を調べてみると、シンガポールなどでは、ちゃんと罰金を取っている。
 私は意を決して、平成6年8月に、市に対して条例制定を求める請願書を提出した。
 すると、行政当局はまたもやお決まりのことなかれ主義、せっかく開いた委員会だったが反対がほとんどを占めた。委員会の構成は市職員20名ほどと市会議員15名というものだったが、誰一人積極的に賛成する者はいなかった。
 私は呆れた。腹が立った。
 そこで、強硬意見を委員会にぶつけたのである。




「これではラチがあかないから、ガム業者を読んでガムを売るなという販売禁止条例を出したらどうだ」
私はテレビ局の人間も呼んでおいたから、役所側は、これ以上ことが大きくなっては困るという考えに傾いていった。共産党は反対したが、他は、現場に何回も見に来たりして、ようやく賛成ということになった。ところが、また問題が起きた。

「罰金を取るというのはどうかね」

エピソード10に続
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