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金澤義春物語第5部・ホームレス対策を急げ(エピソード4からの続き)

まだまだ増えるホームレス


私は、ホームレスの皆さんに人一倍関心を持っている。なんとか更生させる方法はないものか、そう思いつづけている。
世間の人々や行政は、
「彼らは仕事をいやがる怠け者だ」 と思っているが、実はそうではない。 「働きたいけど仕事がないのだ」 と彼らは言う。一人一人の身の上についてはいろいろあろうが、それが人生なのである。
一体、あのホームレスの皆さんがどういう生活をしているか、一般の人は知っているだろうか。関心がないからおそらく知らないにちがいない肝心の行政さえも知らないのだから。そこで、まず最初にその実情を書いてみたいと思う。




 この本のはじめに、いきなりホームレスの話とはと思われる人もいようが、実は私もホームレスの経験があるのだ。他人事ではない。そのことについては、別項でくわしく書くつもりだが、それはともかく、青島東京都知事、高橋川崎市長、高秀、ノック大阪府知事の諸公は、文化都市の玄関口にホームレスを放置して恥ずかしくないのか、まずそれを問いたい。
何かやったとすれば、あの東京・新宿の追い払い騒動ぐらいのもので、建設的な方法は何一つ取られていない。




いま、私は及ばずながら、ホームレスのための農場計画を進めている。その具体的な方法についてはあとでふれるが、今の日本はやれリストラだ、倒産だと、ホームレス増加の道を突き進んでいる。それなのに、政治家も行政もなんら手を打とうとはしない。
ま、それも道理か。いまや日本人は我利我利亡者の集まりだ。ましてや政治家も役所のお役人も世の中がどうなろうが、ちゃんとお給料は保証されている。ホームレスは自業自得だぐらいにしか考えていない。




 本当に自業自得なのだろうか。
私は、彼らと話す機会を作っていろいろ聞くが、なんの自業自得どころか、彼らをホームレスにしたのは、政治の貧困、経済の貧困、行政の貧困、責任はまさにそこにあるのだ。
バブル崩壊による倒産、給料は貰えなくなる、家賃は払えない、追い出される、寝る所がないというケースはいくらでもある。
これではいけないと求職に精を出すが、
「おトシですからね」 と、断られる。たとえば建設会社など、労働基準法をタテにとって断る。今どきの若い者より精神的にも肉体的にもずっと強い中年だが、会社は若いのを取りたがる。

こんな例もある。やっと仕事にありついた。臨時の仕事だが、日当はちょっといい。喜び勇んで大いに働いて、さて給料日、十日分だからこのくらいにはなるだろうと胸算用で会社へ行ってみると、社長はいない。 「社長がいないから払えないんだよ」。 そのひと言でがっくりくるが、よほど急な用事でもあって留守にしているのだろうと思い、翌日行くと、まだ居ない。次の日もいない。
これじゃあ計画的としか思えない。実はこうした会社が多いのだ。これなら、もう仕事はあきらめた……勤労意欲をなくしてまたホームレスに……。彼らはこうして意欲をなくしていった。




 川崎市の川崎駅周辺のホームレスは746人(平成10年8月27日調査)前年より318人も増えている。このあとも増えてはしても減りはしない。
生活方法もダンボールを使っている人が大半で、年齢的には55歳から60歳ぐらいの男性が多い。
市では臨時宿泊所を作ったりしているが、収容人員はたったの百人、それも正月三日間だけである。これではただの申しわけ程度、お茶をにごしているとしか思えない。現在、彼らにパン券(660円)が一日分として支給されている。



 これは人間最低のカロリーだ。この費用が川崎だけでも年間約1億8千万円、それは税金から支出されている。この金を生かしてその日暮しでない抜本的な対策を打ち出さねばならないのだが、行政はまだ手をこまねいているだけである。
パン券だけでは生きていけない。ゴミ箱をあさってタバコの吸殻を拾い、レストランの残り物を手づかみで口に投げ込み店……これが実情なのである。
 なんとかしなければいけない。この思いは日増しに私の胸を痛めていった。


エピソード6に続く
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