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金澤義春物語第6部・ホームレス対策を急げ(エピソード5からの続き)

ガム清掃ホームレス部隊


 私は、平成6年7月に、このホームレス諸君に自腹を切って仕事を与えた。“ガム清掃ホームレス部隊”なるものを作ったのである。
あのチューインガム、これほど街を汚すシロモノはない。ガム公害などと口では言うが、これを防止する方法は誰も考えない。防止どころか、バカ者どもは、それがカッコいいとかでクチャクチャ噛んではポイと吐き出す。道路はたまったものではない。たちまち黒く汚れて、一体なにが文化国家だ。




 JR川崎駅西口大通りは、平成6年4月に総工費25億円をかけてカラータイル張りの舗道を完成させたが、それがたちまちガムで真黒に汚れた。へばりついてはがすのも容易ではない。西口大通り会の会員たちが清掃をはじめたが、なかなかはかどるものではなかった。
 そこで私は、ホームレスの皆さんによる清掃部隊を考えたのである。私は早速行動に移した。



 私が一人ノコノコとホームレスのみなさんに相談しようと思って出かけてみると、誰一人として口をきく人はいない。市の職員が自分たちをどかそうとやってきたのに違いないと思ったらしい。
 中には恐ろしい形相で私を睨んでいる人もいた。なるほどその時私は気がついた。
 私の服装がよくなかった。背広など着ていてはお役人さんと間違えられるのは当り前だ。

 

 そこで一週間後、見事に変装して芝居をうった。黒く汚れた手ぬぐいえ頬かむりをし、よれよれになったジャンパーを着て、手には大きなズタ袋。実はこの中にはタバコ、パン、ジュース、ビール、焼酎などを入れてあるのだが、外見にはわからない。
「オレは多摩川の瓦に寝ているんだけどヨ、蚊にくわれてたまらねえ。ここはどうかね蚊がいるかね」
「ここはいねえよ…」
「そいつはありがてえ。ま、いっぱいやろうや…」
 私は、例のズタ袋を開けてビールなどを取り出した。飲むほどに世間話に花が咲く。ようやく私を仲間と思ってくれたわけだ。頃合いを見て私は切り出した。


「ところでよ、いい仕事があるらしんだがどうかね」
「どんな仕事だ」
「そこの商店街で、道路にへばりついているガムをとってくれというんだが、金はよ、1時間千円ぐらいだそうだ。10人ぐらいでやってもらいたいそうだが、どうだい」

「いつからやるんだ」

「あと、三日ぐらいしてから始めるそうだが、その時はまた頼みにくるよ」



 こんな調子で、次の夜も何人かを口説いてようやく十五人ほど集めた。
 日取りと集合場所をきめて、さあ本当に来てくれるかなあと、ちょっと心配しながら待っていると、あァ来た、来た、ちゃんとみなさんお揃いである。だが、中には妙な顔をしている者もいる。
 この前は、自分たちの仲間だと称した男が今度はちゃんとした服装でいるものだから不思議に思ったのに違いない。私は、ジュースを1本1本渡しながら頼む、頼む、と心をこめて言った。
 それにもう一つ、彼らが眼を光らしたことがある。腕章を巻いた読売新聞の記者がカメラをかまえているのだから無理もない。実は、この記者は、2、3日前に別の取材で私のところに来たのだが、その時、この日のことを話したので、早速かけつけてくれたのだ。




 私はホームレスの皆さんにはゼッケンをつけてもらい、それぞれにガムを取る器具を渡した。こうして、ガム清掃部隊は発足した。一同両手をかかげて、 「エイエイオー」 の掛け声。久しぶりの仕事にありついた彼らの笑顔を私は忘れない。費用は自腹を切ったが少しも惜しくはなかった。


エピソード7に続く
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